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相場が下がって,100万円以上の確率がゼロになっても,権利を放棄するだけですから,時価はゼロより低くはなりません。
ところが相手方であるBさんの「売りオプション」の場合はそうはいきません。
Bさんは当初5万円もらっていますが,相場が下落し相手が権利を放棄しても利益は5万円で,それ以上の儲けはありません。
しかし,相場があがり,150万円になっても200万円になっても,権利行使されれば100万円で商品を売らなければならないのですから,損失は無限に増える可能性があります。
仮に相場が150万円になれば,将来市場から150万円で買って100万円でAさんに引き渡さなければならないのですから,売り方のオプションの時価はマイナス50万円になります。
ここで決算を迎えれば,Bさんは,45万円の損失と50万円の負債を計上することになります。
スワップ取引も,リスクの回避を目的として始められた取引です。
例えば,米国人のAさんが円で借金をし,日本人のBさんがドルで借金をしているとします。
これでは2人とも為替変動のリスクを負っていることになります。
そこで両者の借金の支払を交換できれば,両者が為替のリスクを回避することができます。
貸手との関係などがありますから,借金そのものの交換は難しいのですが,支払だけの交換ならAさん,Bさんの合意だけでできるのです。
もちろん,交換が成立するには両者の借金の負担が等しくなければなりませんが,等しくない場合には,差額を一時金で精算してしまえばスワップ取引は成立します。
この一時金をスワップ料,プレミアムなどと呼びます)。
本当に等しいかどうかは神のみぞ知るですが,通常は統計理論やコンピュータを駆使して将来の支払の価値を予測し,評価します。
スワップ取引でよく耳にするのは金利スワップでしょう。
例えば,固定金利の支払と変動金利の支払を交換するといった取引です。
このような取引は,金利変動のリスクをどの程度許容するかの相違により,固定金利の方を好む会社と変動金利の方を好む会社との間で行われます。
一方の当事者は現在の固定金利より変動金利の方が有利と考え,もう一方の当事者は,上がるかもしれない変動金利より固定金利で資金コストを確定させた方が有利と考えるような場合に,契約が成立するのです。
先ほど,価値の等しいものを交換する,といいましたが,価値が等しいならなぜわざわざ交換するのだろうという疑問の答えがここにあります。
実際には,それぞれの会社の信用度や,資金調達した市場の金利水準などさまざまな要因が関係しますが,金利スワップ取引成立の主要な要因は,当事者の将来の金利見通しと,固定・変動のどちらをより好むかということになります。
一方の当事者が(変動)金利は上がると見てお呪もう一方の当事者が(変動)金利は下がると見ていれば,同じ条件の取引に両当事者ともメリットを認めて参加するわけです。
価値が等しいという場合,「現時点においては」という条件が付いており,将来にわたって等しいという意味ではないのです。
例えば,変動金利0%と固定金利4%が等価であるということは,将来変動金利が上昇するとの予測の上に成り立っているので,その予測が外れれば,当然,交換前の状態に比べて有利・不利が生じてきます。
契約時点では,このようにスワップ自体の価値はゼロ(等価)ですが,時間の経過とともにスワップ自体の含み損益(有利・不利)が生じてくるのは,このような理由によるものです。
時価会計でよく出てくるのが公正価格です。
上場株のように市場があるものは市場価格がありますが,スワップなど市場のないものも少なくありません。
このようなものも時価評価するためには,ある約束事が必要です。
それが統計理論で導き出される理論価格です。
それらは一応金融界,学界などで検討され,合理的なものとされていますが,あくまでも机上の理論ですし,それに基づく計算式などは銀行等によって微妙に違います。
それでもほかに価格がありませんから,関係者により「公正」なものとみなして使っているのです。
時価会計では,この含み損益を算出して,資産または負債に計上することになります。
有価証券では,流動資産か投資等かの区分が問題になることがよくあります。
それは,流動資産たる有価証券を売却すればその売却損益は経常損益に,投資たる有価証券を売却すれば特別損益に計上することとされていたからです。
経常損益は企業総体の収益力を示すものといわれているだけに,有価証券売却損益が経常損益に含まれるか否かは会社にとっても重大な関心事であったわけです。
しかし,これも時価会計の導入により大きく変わりました。
前に説明した時価会計での有価証券の区分を思い出してください。
これに対応して計算書類規則第11条は次のように改正されました。
「市場価格のある株式及び社債(国債,地方債その他の債券を含む。
以下同じ。
)で時価の変動により利益を得る目的で保有するものは,流動資産の部に記載しなければならない。
」つまり,時価会計下での売買目的有価証券は流動資産に記載する,したがって,それ以外の有価証券(満期保有債券,その他の有価証券)は投資の部に記載するべきことが明らかとなりました。
従来ですと,経常損益に執着するあまり,投資の部から流動資産へ振り替えてみたり,戻してみたりといったケースもあったのですが,今後は,有価評券売却損益を経常損益に反映させようとすれば流動資産に記載しなければならず,流動資産に記載したものは売買目的ですから,売却損益だけでなく毎期の時価変動による評価損益も計上しなければならなくなり,有価証券振替による経常損益の調整が意味を持たなくなります。
これは読者としては経常損益の純化が図られたと理解してよいと思います。
ついでに触れておきますと。
その他の有価証券は毎期時価評価するものの,資本勘定に直接計上されるので,損益は次のケースを除いて損益計算書には出てきません。
①その他の有価証券は,毎期時価と取得価格を比較して評価差額を資本勘定に加減するのですが,評価差額全額を資本勘定に加減する方法とは別に,時価が取得価格を上回っている銘柄と,下回っている銘柄とを区別して,上回っている銘柄の評価益は資本勘定に加算し,下回っている銘柄の評価損は損益計算書に計上する方法も適用が可能です。
この方法を採用している会社では,評価損が特別損失に計上されます。
②前に述べたようにその他の有価証券でも強制評価減の適用はあります。
この評価減は特別損失に計上されます。
②やむを得ず売却をせざるを得なくなった場合の売却損益は特別損益に計上されます。
これで当期利益は増えますが,純資産は増えません。
前期まで評価益という形で純資産に含まれていたからです。
純資産が増えない利益と有価証券の時価評価は洗替法によります。
これは例えば,100円で購入したものを決算で時価の120円に帳簿上置き換えても,決算の翌日には帳簿を100円に戻すことをいいます。
ですから,前期決算で評価益20円が計上されますが,翌期首には評価戻入損20円が計上されることになります。
翌期にこの有価証券を115円で売却したとすると,売却益は15円になります。
時価評価したらそのままの方が簡単そうですが,配当制限の計算などは当初取得価額がないとできないためこの方法がとられています。
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